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夏だし、髪を切りに散髪屋さんに行ってきた。
鏡の前のイスに座ったら店員さんに「少しお待ちいただくことになるので髪型決めておいて下さい」と言われて雑誌を手渡された。
雑誌のタイトルは「絶対モテる!メンズヘアカタログ」
正直ぼくは「女性自身」とか「週刊現代」とかのほうがよかったんだけど、「すいません、ちょっと本交換してもらっていいですか?」って言って生意気言うんじゃねえよって逆上されて殺されてしまう可能性がゼロとは言い切れないので、歯向かわずにそのまま「絶対モテる!メンズヘアカタログ」を読むことにした。
読む、と言っても文字を目で追うだけで頭の中ではまた別の事を考えてしまう。 今日の晩御飯の事、明日の仕事の事、来週のNARUTOの事・・・もろもろ
雑誌はほんの数ページめくっただけで飽きてしまって、髪型とは全然関係のない芸能情報のページなんかをただただ眺めていた。
数分後、ぼんやりしている僕のすぐ背後でかわいい女性店員さんの声で「髪型決まりましたか?」と声がして、僕はビクッ!!と我にかえった。
「まずい!」
ナナメ後ろから決まりましたかあ〜?と雑誌を覗き込む女性店員の顔が、一瞬こわばったのがわかった。
そのとき僕が開いていたのはデカデカと「 包 茎 手 術 」と書かれた男性専用クリニックの見開きページ。
ハイネックに顔をうずめるセンター分けの青年が申し訳なさそうにこちらを見ている。
誤解だ。 違うんだ。 たまたまだ。
必死で言い訳しようと頭の中であれこれ考えてみたけれど、どれも逆効果になりそうな気がして諦めた。
「あ、短くしてください。」と言って何事も無かったかのように雑誌を閉じて店員さんに手渡した。
夏はもうすぐそこだ。